アンケート

2000年 2001年

2001年08月27日〜2001年09月01日
東京ウイメンズプラザでの上映にて
 大変な努力を払い、気むずかしく汚れを嫌い、いわゆる「ご近所迷惑」と周りの理解者たちから皮肉られる純潔な一存在として女性をキチンと把握して造形できたと思う。ぎこちない場面(”現代”の表現が一番安っぽかった。しかし、この安っぽさはむしろ狙いであり、成功しているのかも知れない)もあるが、真摯な努力に感動した(制作の姿勢が)。
白石加代子ならではの深い表現と声の美しさがこのコマーシャリズムからはずれた地味な映画を支え、支配していると思う。超一流の女優はやはり見せる、と思った。(64才・女性)

 尾崎翠は昔から好きだったのでこの映画にも興味があったのですが、99年岩波ホールで見のがしたり、昨年京橋で見のがしたりして今回やっと観ることが出来て嬉しいです。尾崎翠の持つ感覚の鋭さや官能性、彼女が持つ世界の豊かさが大変リアルに伝わって来ました。現代のシチュエーションをパーテイシーンにした構想にはびっくりです。(24才・女性)

 「尾崎翠を探して」の部分は、時間が逆戻りしていく描き方が面白かったです。「第七官界彷徨」の部分は、女の子も男の子もいきいきとして素敵でした。家や部屋のセットも素敵でした。(31才・女性)

 物語世界、過去へ遡る尾崎の半生、現代を交差させながら展開していく構成が作品にどっぷりつかる事なく、時に自分の頭を思考させもして働いたりと、ただ観せるだけに終わらせない詩的かつ知性に訴えかける作品だった。(26才・男性)

 翠さんの時間が巻き戻されて、少し進む。また、翠さんの時間が巻き戻されて、少し進む。巻き戻された時間の中で、進む時間が少しずつ長くなる。いつまで時間が巻き戻されるのかと不安になったら一番美しい時間で止まった。よかった。それにしても翠さんの作品の中の言葉は美しい。コケの恋に出会ってみたい。(女性)

 ちょっととっつきにくい作りで、いかにもフランス人好み。尾崎翠本人、及び作品を全く知らない人間にとってはもう少しサービスが欲しかった気がする。(47才・女性)

 観てよかったです。赤毛の女の子に似ている友達がいるのですが、僕は観ている間ずっとその子のことを本当は昔から好きだったんだ、と思っていました。ヘンな感想ですみません。白石さんも柳さんもすごく魅力的でした。(21才・男性)

 尾崎翠という人物を掘り起こし映像にしたところに意義を感じました。また3つの時間軸を設定して描いた手法がとても面白い。後半生の描き方がだんだん若くなっていくのが少々切なかった。(41才・男性)

 とてもスバラシイ映画だと思います。「現代」の部分がややトッピでなじみにくかったですが、小説の部分と翠の伝記部分はとても共感出来ました。着物のセンスもステキ。(25才・女性)

 白石加代子が突出してよかった。彼女の自信たっぷりな演技が映画に厚みを与えていた。特に歌いながらミシンをかけているところで一瞬何語で歌っているのか分からなくて、とても印象的だった。(25才・女性)

 岩波で見損なったので楽しみにしていました。時代が戻っていって、最後は重なるのかと思っていたら、20−30代がなかった。その間に女子大に行って作家、詩人として確立していった時のことも知りたいと思いました。本を読んでみます。(48才・女性)

 3つのストーリーが交互に出てくる構成が新鮮だった。最初は混乱しましたが、メリハリが効いているし、特に尾崎さんが若返って後半活き活きしてくる様子が気持ちよく、また何故かなつかしい気がしました(母、祖母が生きた時代の雰囲気がよく再現されている気がした)。ただ、現代の風景が少し不自然な感じがしました。(29才・女性)

 女性作家同士のふれあいが描かれていて、特にラストシーンは楽しそうで見ていて心が潤いました。女性の友情、もしくはレズビアニズムなど”女性同士の関係”を描いたものをもっと見たいです。(31才・女性)

 尾崎翠の伝説的なカリスマ性やはかなさが痛々しく伝わってきた作品。映画の1シーン1シーン、1カット1カットが美しく、コケの質感や湖の砂、海、そしてたらいに落ちる雨のしずくなどの描写に感動しました。私が目指しているものでもあります。美しいです。(24才・女性)

 現代をクイアで表現し、尾崎の時代の男女の観念とで時代表現をし、そこを飛び越えようとする女たちのいたことの対比がクッキリしていて分かりやすかった。感覚を摩耗させた男性はこの映画にはシットから拒否感を持つのでは?(49才・女性)

2001年3月24日
映像サロンー女性がつくる映像
「第七官界彷徨−尾崎翠を探して」
(横浜女性センター主催)
 変わった経歴の女性監督の珍しい話に感心しました。映画はやや暗い感じだった。原作を読んでなかったので、筋の辿り方について行けないところがありました。(男性)

 父の郷里が鳥取ですので、作品がとても身近に感じました。歴史の中に埋もれていく人物を拾い上げ、映像化されたことに大きな敬意を表します(非常な困難を伴った事と思います)。監督のトークが聞けることも作品理解を深める助けにもなり良かったです。(女性)

 3部のモザイクで成り立つと初めに解説があったが、それでも分かりにくかった。小説を読んでいなかったからか。初めのパーテイシーンからテレビ画面に入っていくのは導入として面白かった。監督の元気な語り口は、こちらまで元気になりました。女性たちの力を合わせて完成させたところがその元気の源でしょうか。さっそく小説を読んでみます。(女性)

 とてもよくまとまっていると思う。尾崎翠の晩年からさかのぼって若い日へと展開していったのが、ラストを心地良いものにしていると思う。私の中での尾崎翠のイメージも白石さんとぴったりでした。(女性)

 全く何の予備知識もなく見ました。始まって40分位たっていましたので、3つの話が同時に進んでいるのが終わり近くなって分かった次第。でも、翠の実年齢がどんどん若くなっていくのと、鳥取の砂丘の場面と空からの映像がとても印象的だったのは、浜野監督の話を伺って、やっぱりね、と納得しました。女性の視点からピンク映画をとっている人の存在を知りませんでした。どんなものか見てみたくなりました。次回の老女たちの映画、楽しみです。岩波ホールで「八月の鯨」を見た時、老女役が主役をやれる時代の到来に感激しましたので、日本版でも作られると知って嬉しいです。(女性)

 レイプされた女性が傷つくどころか喘ぎ出す。あれ?と思うおかしなこと、女の側からきちんと性にむかいあうこと、ついふたをしてしまう問題をこんなにわかりやすく定義してくださってありがとうございます。改めて、私自身の生=性を見つめ直すきっかけになりました。浜野カントクは一貫性があってエライ! 私もそのように一貫性をもって生き、子供(娘)に伝えたい。息子がもし生まれても、浜野カントクのピンク映画を見せたい。(性教育?レンタルビデオ(AV)は多くはダメ!)私もぜひ見たいです。「第七官界ー」も原作も読みたいです。新しい作品作りもまだまだ20年、30年とピンク映画の本数を上回る映画を撮り続けてください。期待しています。(女性)

 すばらしいひと時をありがとうございました。女性、男性が人という自然な形で存在し、生きた尾崎翠と第七官界彷徨とそれを見る人々、それから浜野佐知さんとが、複雑ではあるが絶妙なモザイクの中でなじんでいる。こんな感じの不思議で上質なひとときでした。(女性)

 浜野監督のお話を伺い、映画への熱い想いがとてもよく伝わってきました。この世界で、女性がメガホンを取り、女性の側からの映画をつくる大変さ、また、女性の生き方を掘り起こして表現する事への大切さを感じました。題名からはピンとこなかったイメージが、お話を聞く事で背景がよく分かりました。埋もれていった沢山の先駆者の女性が再評価されることは、これからの新しい時代をひらいていく一歩になると思います。改めて監督のご活躍を心より賞したい気持ちでいっぱいです。(男性)

 埋もれさせられている女性(有名・無名を問わず)の生き方の提示は非常に意義深いので、是非又製作してください。例えば、女優白石加代子の生き方そのものも、おそらく作品化に耐えるのではないかと思います。女性の視点からの異議申し立ての作品は、今後も現代の女性や男性に大きな力を与えてくれると思います。(女性)

 「第七官界彷徨」を読んで、絶対に映画にならないと思っていましたので興味を持って見せていただきました。映画の作り方、手法が大変面白かったです。ああ、こういう形で映画になるんだなあ、と感心しました。私には白石=翠の違和感は余り感じられなかったです。次の作品を本当に楽しみにしています。(女性)

 私は尾崎氏の「第七ー」は読んでおり、昭和初期の作品としては確かに画期的であり、そのシュールさ、ユーモアさ等は、今日でも十分に通用する魅力を持っていると思っています。ただ、今回の映画がその魅力を十分にすくい上げていたかという事になりますと「?」という事を感じざるを得ません。その原因としては「第七ー」の他に作家のご半生と、作家に対する現在の評価をからませたため、焦点がボケてしまったからではないかと思います。尾崎氏が、昭和の初期、女性がその感性のまま自由に自立して生きがたい時代に、自分の感性を押し通してボロボロになりながらいくつもの作品を仕上げたという「フェミニズム」的な評価をからませるため自伝的要素を加味した事は理解出来ますが、そもそも「第七ー」の内容はいわゆる「フェミニズム」等のものとは距離があるのではないでしょうか。もそ、この時代(女性が自立しがたい時代)にこんなすばらしい作品が生まれたというフェミニズム的な視点を加えるのであれば、原作になくても「第七ー」の時代背景をもっと描き込む事でそれを暗示する事も出来たのではないでしょうか。ましてや、尾崎氏の現在における評価を「評論家」に語らせる等、too much だと思います。
 浜野監督の言う「役割でないただの女性としての感性」は「第七ー」の物語の部分では男性の私でも感じる事は出来ました。それだけに「ご半生」と「現代の評価」の「説明」をしたためになにか「ダサ」くなってしまったことが残念でなりません。「第七ー」のストーリーに忠実でなくても、もっと自由にイメージとしてふくらませて「女性としての感性」を描いていたらよかったと思います。尾崎氏の世界と「説明」。これは最も相容れないものと感じています。(男性) 

 まさにこういう映画に(世界に)出会いたかった。身体感覚」の発する身体言語(波的伝播力のある言葉)、原始の自然言語こそ取り戻すべきだ。頭脳偏重、理性偏重はもうそろそろやめにして思考が狂った羅針盤、遠心力であることを悟るべきだ。(女性)

 尾崎翠を全く知りませんでしたが、チラシを見て興味を持って観ました。ジェンダー、セクシュアリテイの勉強をしているので尾崎を読んでみようと思いました。臭いと音の融合して映像というところですが、もの心つかない頃のこやしの臭いが脳に蘇って来る感じがして、ゾクッと来る瞬間がありました。もう一回観てみたいです。

 映画を観て尾崎翠という人に興味を持ちました。彼女の本を読んでみたいと思います。映画の中の尾崎翠はとても活き活きしていて、最後の砂丘に立っているシーンもとても印象に残っています。

 「第七官界彷徨」の小説を忠実に映画化されていると思います。「第七ー」は非常に人間の五感を大事に表していると思います。特に臭いや音に対して感覚がベースにあると思います。初期の作品「無風帯から」と読み比べて見ると良く分かります。「こほろぎ嬢」の桐の花の臭いもそうです。臭覚、味覚,視覚をていねいに書いてあります。映画化は大変だったと思いますが、素晴らしい映画だと思います。

 作品、尾崎翠ワールドより女優白石加代子さんの才能、力量が印象に残りました。白石さんの舞台とは違った魅力、映像の風情、素晴らしいと・・。最後のシーン、美しくもあり、映画のテーマ、余韻も・・・とてもよかった、と感じました。

 浜野監督の情熱が伝わってきました。尾崎翠の世界を知りたくなりました。新作品「百合祭」もぜひ見せてもらいたいと思います。

 予備知識もなく観ましたが、監督の話はとても心に響きました。又、本を読みたいと思います。是非これからもよい作品を作ってください。

 解りにくい世界も映像になると少し解ったような気がした。トークの中で「女性」という事に固執していられましたが、声高に「女・女性」と言わないで良い社会は遠いのか、と改めて感じました。男社会の映画界でこれからも頑張ってください。

 音楽が大変良かったと思う。映画の中の色々なメロデイは心に残るものが多く、もう一度聞きたい。主人公がそれぞれの場面で歌ったのは映像より解りやすく物語を伝えているように思った。解りにくい複雑な物語が感覚的には心地よかった。

 白石さんの翠役はやはり「白石翠」となり、確かに迫力があり、観る者を引きつけます。質問であったように「尾崎翠」の実像が浮かんでこないと言うよりも、私は、翠像の新しいイメージが構築されて良かったと思います。浜野監督のお話も大変良かったです。次回作の「百合祭」も是非観たいです。これからは、やはり「高齢者」で「女性」が一丸となる時代が来るようですから、監督は先見の明があると思いますよ。期待しています。

 大変興味深く見せていただきました。まるで一篇の詩をよんでいるような感覚で引き込まれました。ラストシーンは圧巻でした。感動しました。

 主題に適した方法で映画制作された点、現代からの視点の捉え方、納得できました。今までの映画の方法から脱却して、これからも素材の発掘を期待いたします。

 この企画を知り、驚いた。「第七官界彷徨」が映画になった事。どんな人が作ろうと思ったのかしら、と思った。よくぞ、光をあててくれたと感謝しています。

 尾崎翠についての知識があまりなかったので、映画についていくのが常に一歩遅れる感じだったが、監督の話を聞いて様々な人との出会いでこの映画が出来た事、又、スタッフの三分の二が女性だった事はこの映画にも反映されていると思う。高野悦子さんの「女性が映画をつくること」を読んで、日本での男社会を破る人たちの勇気と浜野監督の意志が重なった。日本でも海外のようにもっと女性監督が出て欲しい。監督の欲のなさ、尾崎翠に対する 思いこみが素晴らしい。

2000年12月1日
パリ日本文化会館にて日仏女性研究シンポジウム「権力と女性表象--日本の女性たちが発言する--」
プレイベント「映画の夕べ」
 過去、現在、そして創作の中の女性たちの間を行ったり来たりする構成が巧みで気に入りました。時間の観念は消滅しています。私たち観客と監督、映画の中で演じる女優たちの間の距離も消滅しています(映画作品というものは、時間空間を消し去るものです)。死から逆行する構成が、ミドリの本質的な生命力を際立たせていると思います。(草月流生け花教師/59歳)

 フェミニスト的フェミナンな感性で創られた作品を観るのは楽しい。この映画を観て、カミーユ・クローデルのことを思い出した。(教師/47歳)

 美しい物語と映像。理由は今は分らないが、ヴァージニア・ウルフを思い出した。(女優/60歳)

 フランス人観客に、このようなジャンルの映画を発見させて頂き、感謝。非常に変わったスタイルの映画で、それが理解出来るように行なわれた監督の対談がよかった。(法律家/39歳)

 黒澤や北野の映画は感性に溢れているが、本質的に男の映画であることが分った。この映画を観て、女性芸術について考え、興味を持つことが出来た。僕は将来映画監督を目指しているが、どんな人間にも女性的な部分がある。それを研究することで、視野を広げていきたい。(学生/24歳)

 美しい映画。アップが多く画面が暗くて、少しくたびれる。行き先はどこ? 人生を逆行するのは何故? 監督の追及する目的は?不思議。でも、美しかった。(主婦/43歳)

 非常に深く掘り下げた映画。女性の感受性のみならず、男性の感受性がより明瞭に表現されているのが良い。しかし、精神病というタブーの主題は、映画の中では女性だけが病気にかかるのは何故? 少なくとも、男性も心の病気については同じはず。この映画を有難う。(看護婦/53歳)

 詩的で美しい映画。フォルムは古典的。主体と無意識の位置、アーティストの仕事についての考察、といった現代的な問題を浮き彫りにしている。特に感心したのは、この映画の絵画性(満ちあふれた色彩、静物画のような細部の大写し、画家ユジェーヌ・ブダンを思わせる最後のシーン)。(記録映画製作者/49歳)

 多面的で様々な様相が描かれていたが、メランコリーと悲しみが際立っていた。(彫刻家/52歳)

 登場人物の話す日本語が変。多分ミドリの言葉なのだろうけれど。第七官界の人物の話し方は書き言葉のようだった。(日本人女子学生/25歳)

 複雑な構成がスムーズに移行することに感心しました。白石さんのような偉大な女優さんをあれだけ自由に演出なさったことも感動。海の美しさとかコケの緑とか、感覚的な表現もよかった。(ジャーナリスト/66歳)

 素晴らしい詩的世界を描いた作品と同時に、翠という一人の女性の生き方をセンチメンタルに表現するのではない、力強い構成で引っ張っていってくれた映画でした。今は大学でフランスの詩を勉強していますが、「第七官界彷徨」という、この鳥肌が立つほど官能的なタイトルをつけた詩人が日本にいたことに驚きました。(学生/25歳)

 戦前、女性が書くということは相当なプレッシャーがあったと思われる。その時代を生きた尾崎翠をはじめ文学者たちの生きざまに感動。松下文子(吉行和子)が「女子大退学した後、二人で一日チェーホフ読んだりしたわね。あの頃に戻れたら」と翠に語りかけるところがよかった。(学生/37歳)

 女性をテーマにしているが、作家、画家、その他アート分野の人々の、男女区別のない芸術家の心情、行動、心理など、共通した生きざまです。浜野監督に喝采を送るとともに、今後は国際的なテーマも。(作家/58歳)

(翻訳協力=日仏女性研究学会)