上映記録

2006年 2007年 2008年 2009年 2010年

2006年
10月14日〜15日 【鳥取県先行上映会・鳥取市】
鳥取市、岩美町、倉吉市、米子市と回る、先行上映会のスタート。上映会場は、「県民ふれあい会館」。2日間で4回の上映だったが、初日が279名、2日目が208名と順調な滑り出しにホッと胸を撫で下ろす。16ミリの映写機を、岡山から岡山映画鑑賞会の真田明彦さんが持ち込んで、映写も担当してくれたおかげで、とても美しい映像が再現されて感激。
10月16日 【鳥取県先行上映会・岩美町】
8年前の『第七官界彷徨-尾崎翠を探して』でお世話になった岩美町だけに、懐かしい顔、親しい顔も多く、故郷に戻ってきたような上映会となった。今回の先行上映会では唯一のDVD上映だったが、岡山の真田氏の協力でハイクオリティの上映が可能となった。会場は、「岩美町中央公民館」。入り口脇に「尾崎翠コーナー」が特設されるなど、尾崎翠の生地ならではの配慮と、町を上げての上映に、157名の町民が駆けつけてくれ、榎本武利町長も交えたアットホームな上映会となった。
10月17日〜18日 【鳥取県先行上映会・倉吉市】
『こほろぎ嬢』のメイン・ロケ地だった倉吉市だけに、倉吉市役所を始め熱の入った上映支援体制が敷かれ、2日間で839名の観客動員となった。会場は、2003年に『百合祭』も上映された「鳥取県立倉吉未来中心」。長谷川稔倉吉市長や、「こほろぎ嬢」サポートクラブ代表の渡辺法子さん、『こほろぎ嬢』で唯一鳥取県内出演者である倉吉市在住の平岡典子さんなどのご挨拶もあり、華やかな上映会となった。
10月19日〜20日 【鳥取県先行上映会・米子市】 
ロケ地も少なく、一番心配された米子上映だったが、境港市や隣県の島根県から観に来てくれた人もいて、2日間で245名の皆さんが会場に足を運んでくれた。上映会場は、米子市福祉保健総合センター「ふれあいの里」。窓の遮蔽が不完全だったり、音響に問題があったり、と上映に適さないところもある会場だったが、鳥取県西部総合事務所の職員の皆様の努力で、満足のいく上映会となった。
10月21日〜22日 【鳥取県先行上映会・鳥取市】
再び、鳥取市に戻っての締めくくりの上映会。会場は初回と同じ「県民ふれあい会館」。すでに2日間上映しているので、果たして観客が来てくれるのかどうか不安だったが、初回を上回る701名の方々が来場。若い観客も多く、熱の入った上映会となった。
10月26日 【第19回東京国際女性映画祭】
上映会場の東京ウィメンズプラザは、鈴なりの立ち見がでるほどの盛況となり、吉行和子さんを始めとした出演者が勢ぞろいした舞台挨拶も大好評で、今回の映画祭一の入場者数だったとか。鳥取県の片山善博知事からも花束が贈られ、華やかで熱気のある映画祭上映となった。
11月26日 【鳥取県若桜町上映会】
『こほろぎ嬢』ロケでは大変お世話になった若桜町だが、10月の全県先行上映会から1ヶ月遅れの単独上映会となった。DVD上映。

2007年
1月4日〜19日 【シネマアートン下北沢・新春ロードショー】
 1日3回のフル上映。初日は、町子役の石井あす香さんが、あでやかな着物姿で舞台挨拶。その後、上映期間中の週末には、吉行和子さんを始め、鳥居しのぶさん、片桐夕子さんと全出演者がトークイベントに駆けつけてくれて、大盛況となった。2度、3度と観に来てくれるリピーターも多く、5月のアンコール上映が決定した。
 1月4日=石井あす香さん舞台挨拶
 1月6日=石井あす香さん、浜野監督トークショー
 1月7日=吉行和子さん、大方斐紗子さん、浜野監督トークショー
 1月8日=吉岡しげ美さん(音楽)、浜野監督トークショー
 1月11日=玉井五一氏(元創樹社編集長)、田中禎孝氏(元岩波書店)、山崎邦紀(脚本)トークショー
 1月13日=鳥居しのぶさん、外波山文明さん、宝井誠明さん、野依康生さん、浜野監督トークショー
 1月14日=リカヤ・スプナーさん、イアン・ムーアさん、浜野監督トークショー
 1月19日=片桐夕子さん、鳥居しのぶさん、浜野監督トークショー
4月21日〜5月11日 【第七藝術劇場】
大阪・十三のミニシアターで、関西初ロードショー。4月21日から27日までの1週間は「第七官界彷徨−尾崎翠を探して」とW上映。
多くの観客が2本立てで観てくれる。大阪上映は苦戦が予想されたが、鳥取県大阪事務所の尽力でほとんどの一般紙とスポーツ紙に紹介記事や浜野監督のインタビューが掲載された。また、初日に鳥取からわざわざ大阪まで観にきてくれた若い女性がいて、昨年の鳥取先行上映会で一度観たのだが、ぜひもう一度観たかったのだとか。鳥取県人会や鳥取銀行大阪支店の協力など、鳥取コネクションに支えられて、成功にこぎつけることが出来た。
5月5日〜18日 【シネマアートン下北沢・アンコール上映】
午前11時からのモーニング上映だったが、熱心な尾崎翠ファンや、お正月のロードショーで観たが、もう一度観たいと来てくれたリピーターの観客で賑わう。最終日には、ロケした若桜町の木島氏邸の縁戚の方が連れ立って来てくれたり、知り合い同士が偶然劇場で出会ったりと、たくさんの出会いのあった上映となった。
5月10日 【松戸市文化振興財団主催「こほろぎ嬢」上映&トーク】
主演の石井あす香さんの出身地であり、鳥取県とは二十世紀梨で縁の深い千葉県松戸市での上映会。川井市長を始め、市を挙げての協力態勢で、多くの市民の皆さんが集まった。会場ロビーには鳥取県の観光ポスターが貼られ、鳥取県東京事務所の皆さんと共に、石井あす香さんや浜野監督が来場者に観光パンフレットを配布して鳥取県をアピールした。会場には、あす香さんのご家族や友人も多く見えて、あす香さんにとっても有意義な上映会になったのではないだろうか。
11月18日 【岡山映画祭】
11月3日から12月2日まで週末ごとに開催される映画祭で、岡山県立美術館ホールや岡山市立オリエント美術館などいくつもの会場で上映されるが、『こほろぎ嬢』は中盤の18日に岡山市デジタルミュージアムのホールで1日3回、各回浜野監督のトーク付きで上映された。『百合祭』とのW上映だったが、津山市や倉敷市などから観に来てきてくれた人もいて、上映終了後もロビーで活発な意見交換が行なわれた。
12月14日 【〜映画と音楽の夕べ〜「こほろぎ嬢」上映+吉岡しげ美コンサート】
浜野監督の故郷、徳島で開催された映画と音楽のジョイント企画。吉岡しげ美さんは、浜野監督の一般映画3作のすべての音楽を担当、『こほろぎ嬢』でも胸に染み入る曲を作曲している。コンサートでは、金子みすゞの「このみち」、茨木のり子の「わたしが一番きれいだったとき」など5曲を披露した。
主催は、(財)徳島県文化振興財団と徳島県立文学書道館。会場は、徳島県郷土文化会館。300人を超える観客が集まり、コンサートや映画&トークを楽しんだ。浜野監督出演のNHK教育TV・ETV特集を観た、という女性が道で浜野監督に声をかけ、急遽会場にかけつけるハプニングも。浜野監督にとっても、故郷の温かさを感じた幸せな上映会となった。

2008年
2月24日 【〜映画・音楽・トークの誘い〜「こほろぎ嬢」上映&吉岡しげ美コンサート】
大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)の協催事業として午前と午後に2回開催された。京都精華大学のレベッカ・ジェニスンさんや三木草子さん、2002年に同じくドーンでの「百合祭」上映に尽力してくれた赤羽佳世子さん、今年熊本で「こほろぎ嬢」上映を企画してくれている谷口絹枝さんなど、たくさんの友人たちも駆けつけてくれ、2回で350人を越す盛況となった。
プロの映写技師さんによる35ミリ上映は実に美しく満足のいく映写だった。また、観客の皆さんの反応も大変よく、吉岡しげ美さんもノリノリで、浜野監督とのトークでは、『第七官界彷徨−尾崎翠を探して』の「おもかげの歌」をピアノの弾き語りで披露するハプニングも。
浜野監督の「今日からは“還暦女の逆襲”で頑張ります!」という宣言にも場内が大いに沸いた。
6月22日 【「鶴ヶ島市ハーモニーふれあいウィーク」特別イベント・『映画監督・浜野佐知の仕事』】
埼玉県鶴ヶ島市の男女共同参画週間の一環として企画された特集上映で、『第七官界彷徨−尾崎翠を探して』『百合祭』と浜野佐知の一般映画3本を一挙上映の国内初の試み。つるがしまフィルムパートナーズ主催。
会場は、鶴ヶ島市若葉駅前のシネコン「シネプレックスわかば」のシネマ・2(166席)。35ミリ上映。素晴らしい上映環境で「こほろぎ嬢」の映像の美しさが最大限に発揮された。さすがシネコン、と感激。
上映前のトークには、浜野監督と『第七官界彷徨−尾崎翠を探して』『こほろぎ嬢』とW出演の宝井誠明さんが登場。上映後の交流会でも大人気に。100名を越す入場者の中には若い観客も多く、尾崎翠の愛読者層の広がりを再確認できた上映だった。
7月12日 【平成20年度「男女共同参画週間inパレア」・『こほろぎ嬢』上映&浜野佐知講演】
熊本大学の谷口絹枝さんの尽力で実現した熊本県男女共同参画センター主催の上映会。共催・「こほろぎ嬢」熊本上映の会。
会場は、くまもと県民交流館パレア・ホール。16ミリ上映だったが、ホールを埋めた200名を超える観客の皆さんには、熊本映画センター・永田さんの映写で美しい映像を観てもらうことが出来た。上映後のトークでは、活発な質疑応答が続き、脚本の山崎邦紀氏も参加して有意義なディスカッションとなった。
また、福岡映画サークルから9名もの方々が遠路ご参加くださって、その後の交流会も大いに盛り上がった。


●「こほろぎ嬢」熊本上映の会・代表谷口絹枝さんのご挨拶

 こんにちは、「こほろぎ嬢」熊本上映の会代表の谷口です。今日は、女の方も男の方も、また若い人たちからそれなりに年をお重ねになった方々まで、こんなにたくさん来ていただき、本当にうれしいです。
これから5分程度で、この度の上映と講演を提案した者として、企画について考えていることを簡単にお話しします。
今回の企画は、映画、作家、監督の3点を結ぶところに成り
立っています。つまり、「こほろぎ嬢」という映画を挟んで、その原作となった3編の小説の書き手である尾崎翠、そしてそれらの小説を映像化した浜野佐知という3点です。では、その3点がどのように結びつくのかといえば、そこからは、「女性と表現」という関係が見えてきます。
では、「女性と表現」の関係とはどのようなものか。少なくとも日本の近代以降をみると、端的には次のようにいえると思います。社会そのものが男性中心でまわっているなかで、女性が書くこと、何かを創造することは、男性とは何かと比較にならないほど社会的にも経済的にも不利で、家族との軋轢も生じるということ、ことばを換えれば、書くことそれ自体を獲得するための闘いを強いられてきた側面があるだろうと。社会のなかでそのような位置に女性が置かれてきたということです。女の本分は家庭の仕事であるとか、たとえ何かを書いたとしても、それは女性特有の話題で女らしい作品とみなして評価される傾向があります。今もあまり変わらないのではないでしょうか。女性の書くものは男性の書くものの付け足し、つまり「女流」というわけです。今も「女流」ということばは死語になっていません。
とはいえ、男も女も性別役割に基づく圧倒的な現実を生きてきたわけで、女が直面する現実の見え方や意味が、男中心の社会のそれとズレていたとしても不思議ではありません。
むしろ、そこから紡ぎだされる想像力と表現の世界を、時には憎悪をもまるごと抱えて向き合いたいと思います。女性と表現の関係の困難から可能性への展開がみられるかも知れません。
尾崎翠は明治に生まれ、大正の後半から昭和初期にかけて小説の他、独特の映画評論をたくさん書きました。結婚しない女は女ではないといわれた時代に結婚せず、郷里の鳥取で生涯を終えました。そして、浜野佐知さんが映画監督をめざした1960年代終わりの時代、女にその道は閉ざされていたわけで、浜野さんは50歳をひかえた時期、一般映画に挑戦しようとした時、尾崎翠に出会ったのでした。その第一作目が1998年に作った「第七官界彷徨−尾崎翠を探して」という映画でした。そしてちょっとしたセンセーションを巻き起こした「百合祭」という映画を経て、再び尾崎翠に取りくんだのが「こほろぎ嬢」です。
ということで、女性と表現の関係を改めてうけとめるきっかけとなる場として、県の男女共同参画事業に結びついたということです。今日は、観客お一人お一人が自分のこころで、どうぞ最後までごらんください。ちなみに、九州では初の公開上映になります。
8月2日〜3日 【映画監督・浜野佐知の全貌〜尾崎翠からピンク映画まで〜】
神戸市・新開地の神戸アートビレッジセンターで8月2日、3日に開催された特別イベント。
『こほろぎ嬢』は、8月2日午後4時と3日午後6時からの2回上映。初日の『第七官界彷徨−尾崎翠を探して』の上映の後、「『第七官界彷徨−尾崎翠を探して』から『こほろぎ嬢』への道」と題したトークショーで宝塚市在住の詩人・寺田操さんと対談。寺田さんは、『こほろぎ嬢』の映画評を地元同人誌などにも書いてくれていて、「尾崎翠の文学と映画」を解りやすく丁寧に語ってくれた。
2月の大阪・ドーンセンターでの上映に続いて観に来てくれたリピーターも多く、寺田さんと浜野監督のトークも熱心に聴いてくれた。

2009年
3月28日 【シンポジウム「尾崎翠の新世紀−第七官界への招待−」】
東京都目黒区駒場の日本近代文学館で、東京では初めての尾崎翠のシンポジウムが3月27日、28日の2日間に亘って開催され、「こほろぎ嬢」が上映された。2日目の午前中の上映だったが、大勢の翠ファンが駆けつけてくれ、立ち見となる盛況ぶりだった。
上映後のトークでは、浜野監督を初め、「こほろぎ嬢」役の鳥居しのぶさん、「土田九作」役の宝井誠明くんも参加、撮影時のエピソードや尾崎翠作品を演じることの難しさや楽しさなどを語り合った。このシンポジウムの主催は「尾崎翠の新世紀」実行委員会&鳥取県で、浜野監督が実行委員長を務めた。
9月26日 【「尾崎翠の『こほろぎ嬢』の映画を撮って」DVD上映&トーク】
目黒区青少年プラザ・第2レクホール(中目黒スクエア内)で、目黒区女性学習グループ連絡会主催、目黒区教育委員会共催で、『こほろぎ嬢』の上映会と浜野監督と山ア邦紀氏(脚本家)のトークが行なわれた。
DVD上映だったため、映像のクオリティには残念なものがあったが、尾崎翠の研究者の皆さんや、遠く札幌から駆けつけてくれた人もいて、たくさんの方たちからの質問や感想でアットホームな時間を過ごすことが出来た。

2010年
1月18日、21日 【The 11th Dhaka International Film Festival】
バングラデシュのダッカで1月14日から22日まで開催された「弟11回ダッカ国際映画祭」に『こほろぎ嬢』が招待され、18日の午後3時からパブリック・ライブラリーで、21日の午後7時半からナショナル・ミュージアムでそれぞれ上映された。
14日のオープニング・セレモニーはシェイク・ハシナ・ワゼド(Sheikh Hasina Wajed)首相の挨拶もあり、物々しい警戒態勢の中で始まったが、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、アジアなど世界中から200本近くの作品が集められ、監督やプロデューサーなど、各国のゲストも参加して賑やかに開催された。
18日の『こほろぎ嬢』の上映には、在バングラデシュ日本国大使館の篠塚保大使も観に来てくれ、大使館職員の大村浩志さんが休暇を取って舞台挨拶の通訳を務めてくれた。感謝あるのみ。
世界最貧国の一つと言われる、土埃と喧騒の街ダッカで『こほろぎ嬢』がどう観られるのか不安もあったが、イスラムの国で男二人と女一人の新しい愛と生活の形を描いて、Best Director Award(最優秀監督賞)を受賞したバングラデシュの新進気鋭の監督や文学博士などにはシンパシィを持って迎えられた。
生き抜くことに熾烈な戦いを強いられるこの国でこそ、『こほろぎ嬢』の夢のような透明感が新鮮に映ったのかも知れない。